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たかが、デザイナー。
別に、反論はない。
御園さんにどう思われようが、構わない。
だけど。
たかがデザイナーにだって、曲げられないプライドは、あるんだ。
「その『たかが』デザイナーに言われるようなことをしているという自覚はないんですか? 私は、御園さんのやり方はプロじゃないと思います」
『……それは私への侮辱ととらえてよろしいですね?』
「侮辱ではありません。真っ当な意見だと思います。私個人の、ですが」
私は極めて冷静に、淡々と言葉を返していく。
それとは反対に、御園さんの声はどんどん感情的になっていくのがわかった。
『あなたごときにそんなこと言われる筋合いはありません! 上の者に報告しておきます! 私は仕事を出している側の人間なんですからね! そこをはき違えないでください!』
「構いません。私は作業している人間をそんな風に扱う方を信頼できませんし、信頼も尊敬もできない方と良い仕事ができるとは思っていませんので」
『……! 何様のつもりですか!? 馬鹿にして、許せない……! せいぜい、次の仕事でも探しておくことですね!』
ガチャン! ……と、大きな音を立てて、通話が切れた。
ゆっくり受話器を置くと、何となく、周囲の人たちからの視線を感じる。
私は大きく溜息を吐いて、頭を抱えた。
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