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そんな嘘、信じないで欲しい。
睨みつけたのも、無視したのも、データを送ってこなかったのも。
すべて、御園さんの所行じゃないか。
けれど私はまだ、反論するべきじゃないと思っていた。
ここで感情的に彼女の言い分を否定しても、意味がない。
役者っぷりは彼女の方が何枚も上手なのだから。
それに、神谷さんが御園さんの言い分を受け入れるのも。
彼の立場を考えると、仕方ない気がした。
あくまで私のことより彼女のことを考えるのが、“鳳凰堂の神谷さん”としては正しい立ち位置なのかもしれないからだ。
「羽村さんは、どうかな?」
「え?」
場の成り行きを見守っていた私に、神谷さんが話を振ってくれる。
「具体的に、御園から何か迷惑を被ったとか、仕事の進行上困ったことがあったとか……暴言を受けた、とかでもいいよ。遠慮しないで報告して欲しい」
「そんな、私暴言なんて……!」
神谷さんの言葉に、御園さんは信じられないといった顔をした。
悲壮感たっぷりの響きを持つ彼女の言葉にも、神谷さんは余裕を持って微笑む。
「うん。でも、羽村さんの話も聞いてみないと、不公平だろう? 御園の話は聞いたから、次は彼女の話を聞くべきだと思うんだ」
「……」
俯いた御園さんを見て、彼は私の方に向き直った。
有無を言わさぬ笑顔で彼女を黙らせた神谷さんが、もう一度私を促す。
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