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私の発言を受けた神谷さんが、軽く頷いてから隣を見る。
「御園は、どうかな?」
「……わ、私は……」
一瞬、狼狽えたような仕草を見せた彼女は、キッと強い視線を取り戻して神谷さんに訴えた。
「私は、嫌です! 許せません! 羽村さんとなんて、できません!」
「そう……」
……やっぱり、駄目か。
私は御園さんの強い意志に、悲しみさえ感じて俯いた。
心の中で溜息を吐く。
こうなれば、やっぱり私が外れるしか道はないだろう。
御園さんにも言われたことだけれど、彼女はあくまで仕事を出す立場にいる。
その彼女が担当替え、なんてことになるとは思えない。
頑張ってきたけれど、ここまでだ。
気持ちを切り替えようと、一度ぎゅっと目を閉じて、ゆっくり開く。
顔を上げると、神谷さんの様子が少し変だった。
心なしか残念そうに見えるのは、気のせいだろうか。
「御園」
神谷さんが、隣の御園さんに向き直る。
呼ばれた彼女は、上目遣いで神谷さんを見つめ返していた。
ふう、と息を吐いた神谷さんが、言った。
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