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そして結局、何も変えることの出来なかった翌々日。
事件は起こった。
『羽村さん、どうなってるんですか!』
「は?」
それは、電話口の御園さんの怒声から、始まった。
私は覚えのない怒りに戸惑いながら、その声に耳を傾ける。
データ納品は昨日、すんなり終わった。
ここから先は、印刷会社さんの仕事のはずだ。
けれど御園さんの声は荒く、私に掴み掛かってくるような勢いだった。
「あの、何か問題でもありましたか?」
恐る恐る聞いた私に、御園さんの悲鳴みたいな声が届く。
『何を寝ぼけたことをおっしゃってるんですか!? データのサイズが間違っています! B1だとご連絡さし上げたでしょう!?』
「えっ!?」
その言葉に血の気が引く。
私が納品したのはA1のデータだ。
サイズ違いのミスなんて、新人の頃一度やらかしたっきり、だ。
このタイミングでありえない。
そう思いながらも私は慌ててメールボックスを見直し、御園さんからのメールを開く。
けれど、何度確認しても御園さんからのメールには、A1だと記載されている。
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