1562人が本棚に入れています
本棚に追加
このままだと、責任がどこにあるのか、会社同士で追求し合うことになる。
印刷会社にまで回ったデータ。
きっともう、一部は刷り上がっている。
サイズが違うとなると、もう一度印刷することになる。
印刷代だって馬鹿にならない。
コンビニにあるようなコピー機とは額が違う。
では、ミスした分の印刷代は誰が払うのか?
……それは当然、原因を作った人……ひいてはその会社が担うことになる。
ここでの争いが、会社に大きな損害を与えることになりかねない。
けれど、私の言葉にも、御園さんは動じなかった。
『長瀬さんに伝えた方が確実だと思ったからです』
「っ、担当は、窓口は私です!」
もう、ほとんど叫びに近かった。
声を荒げたせいで、社内の空気が一瞬、止まったのを感じる。
『ええ、だから何だと言うんですか?』
「なに、って……」
言葉を失った。
御園さんの主張は、私にとっては到底受け入れがたいことなのに、彼女にとっては違うようだ。
弁解はおろか、謝罪の意さえ、微塵も感じさせない空気が、そう伝えている。
きっと心から、自分に落ち度はないと思っているんだろう。
これは、私のミスだと確信しているからこその態度だ。
もやもやとした言い様のないわだかまりと、それでも何とかしなくてはという使命感。
そんな気持ちと必死に戦っている私の耳に、はあ、と大きな溜息が聞こえた。
.
最初のコメントを投稿しよう!