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あー、もう、駄目。
我慢の、限界。
静かに、だけど激しく、私の中の炎が揺れる。
それに呼応するように、声が色を失っていく。
「……いい加減にしていただけませんか?」
『は?』
硬かった御園さんの声が、一気に怪訝な空気を纏う。
耐え続けてきた緊張の糸が切れた私にはもう、彼女に対する遠慮も何も残ってはいなかった。
「私の何が気に入らないのかわかりませんが、あなたの物言いは一緒に仕事をしている人間に対してあまりに失礼です」
『な……何ですか急に……』
わずかに狼狽えたような気配を見せる御園さんに、私は畳み掛ける。
「連絡事項を担当者に伝えないなんてありえないでしょう? だいたい、こんなことで支障を来していたら、良いものはできません。お互いプロとして、仕事は仕事と割り切るべきだと思うのですが」
『なっ……! それはどういう意味ですか!?』
「一から説明しなければおわかりいただけませんか? これまでのやりとりのことを思い返していただければ、十分、ご理解いただけるはずですが」
『っ、信じられない……たかが制作会社のデザイナーのくせに、私に向かってよくそんなことが言えますね!』
吐き捨てるような御園さんの声に、私は大きく息を吸い込んだ。
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