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触れてきた黒雪の手を軽く振り払いながら笑うが、黒雪は無表情で俺の顔を見ている。
どうやら顔色が悪い事を心配させてしまったらしく、俺は笑みを浮かばせ黒雪の肩を叩いた。
「でぇじょうぶだよ。心配すんな」
「心配などしとらん」
「あ、そうなの?」
きっぱりと言い放った黒雪は大丈夫だと認識したのだろうか?
それ以上しゃべることなく歩き出してしまう。
黒雪の背中を見た俺だったが、彼が自分を見ていない事を確認した後、口元を抑える。
「っ……」
(実際、ちょっとやばかったんだぁ……)
具合が悪くないというのは、俺にとっては嘘になっていた。
実際、気持ち悪かったのは本当の事で、顔色が悪いというのも本当の事だ。
だが、これはある意味、『空腹』と言う合図。
(クソ……血が飲みたくなってきやがった……)
俺が具合が悪い理由――それは、『吸血鬼』なら起こる事、『吸血衝動』だ。
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