20××年、10月1日 真祖の吸血鬼

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「うーん……本当に大丈夫なの?」 「大丈夫大丈夫。気にすんな春風」 「なら、いいんだけどねー……」  春風はそう言いながら俺から離れていくが、どうやら心配してくれている様子が見える。  おでこに手をあて、ため息を吐く。  日差しは相変わらず俺を照らしているように見える。 (……俺はもう、闇に好かれちまったって事かな?)  もう、自分自身は『人間』と言う弱い生き物ではなくなってしまい、『化け物』と言う存在になってしまった。  普通の生活など、出来るわけがなかった。  いつものように、朝食、昼食、夕食を食べても、『空腹』と言うものがくる――『生き血』と言う存在が。  だが俺は生き血を吸う事など出来なかった。  今まで『人間』として生きてきたからだろうか――今まで一度も人間を襲っていない。  いや、これからも人間を襲うことなく、血液錠剤(タブレット)で生き続けようと思っている。  これは、ある意味自分自身の『掟』でもあったからだ。
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