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酔いも少しずつ回り始めた頃、私は気になっていたことを尋ねようと神谷さんに声をかけた。
「あの……聞いてもいいですか?」
「ん?」
神谷さんは迷いに迷って決めた日本酒……確か、一ノ蔵……が入ったグラスを傾けてから、少しだけ顔をこちらに向ける。
目が合うと、何だか気恥ずかしくて私はおずおずと質問を投げかけた。
「今日おっしゃってた……私の反省すべき点、って、何ですか?」
「ああ、あれか」
軽く頷いた神谷さんが、口元に手をやった。
無意識のうちにその仕草に目を奪われていたらしい。
自分が神谷さんの手元を凝視していることに気付いて慌てて目を逸らす。
……不自然じゃない程度にしたつもりだったけれど、どう見えただろうか。
心配になりながらも自分のグラスに手をかけ、そっと喉に流し、続きを待った。
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