1615人が本棚に入れています
本棚に追加
「僕に相談してくれなかったのはどうして?」
「え……?」
質問の意図がわからず、ただ聞き返すことしかできなかった私に、神谷さんは笑う。
「この前飲みに行ったとき、僕は聞いたよね? 御園はどう、って。あれは話すチャンスだったと思うんだけど、その時には何も言ってくれなかった。どうしてなのか、理由が聞きたいな」
「それは……」
口の端を持ち上げた神谷さんの表情は、私を追い詰めるのを楽しんでいるように見えた。
意地悪な質問をしている、と、自覚しているみたいな顔。
見透かされているんだろうか、それとも、単純に私が困った顔をしているのを見抜かれたんだろうか。
どちらにせよ、その整った顔立ちで迫られてしまったら、逃げ場はない。
私は観念して、ふうっ、と息を吐いた。
.
最初のコメントを投稿しよう!