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「……今日、羽村さんが御園と一緒に最後までやり遂げたい、と言ったときには、本当に感謝したよ。立派だなと思った」
そして少しだけ悲しげな笑みを浮かべて、グラスを手に取った。
「……だから余計、辛かったな。羽村さんにも申し訳なかった」
御園さんがその申し出を拒絶したときのことを言っているんだろう。
すぐに理解した後で、不意にあのとき感じた違和感を思い出した。
ああそうか。
あの時見せた神谷さんの……そう、あの残念そうな顔は……
御園さんに思いが伝わらなかったかったから、だったんだ。
神谷さんは社内の人からも御園さんの話を聞いたと言っていた。
私とのやりとりを聞いて、彼女の話を聞いて、そして私の会社へ謝りに来てくれた。
だとしても、神谷さんは御園さんのことを、信じていたかったんじゃないかと思う。
私の言葉を受けた後、神谷さんは尋ねた。『御園は、どうかな?』と。
あれは、神谷さんが彼女に与えた、最後のチャンスだったんだろう。
そんなことを考えていたら、神谷さんが急に表情を変えた。
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