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「今ここでこうしているのだって、僕の個人的な感情からだよ。お詫びなんて口実。ただ羽村さんと、飲みに行きたかっただけ」
悪戯っぽく笑った神谷さんの言葉に、唖然とした。
何を言ってるんだろう、この人は。
ぽかんと口を開けて固まっている私に構わず、グラスを空にした神谷さんが、次のお酒を選んで注文した。
少しだけ愉快そうにも、楽しそうにも見える表情が、何だか不思議だった。
メニューを元の位置に戻した神谷さんは、話を続ける。
「本来なら、御園を叱るのだってあんな場所でやっちゃ駄目だよね。社内の問題は社内で片付けるべきだろうから。けれど僕は、そうしなかった。何故だと思う?」
「……事実確認のため、じゃなくてですか?」
「それは建前だよ。本音はね」
注文したお酒が運ばれてくると、神谷さんはすぐさま口を付けた。
そしてまた、私の方に向き直って、優しい声色で告げる。
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