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いや、違う。
これは贔屓じゃなくて、もっと、甘い方向の別物だ。
私は、知っている。その感情を。
どくん、どくん、と、急に心臓の音が主張を始める。
そんな私の様子をどう受け取っているのか、神谷さんは苦笑した。
「ひどいよね。自分でも思うよ」
「いえ、そんな……」
かろうじて絞り出した返事に、彼は明るく笑った。
「つまり、僕も私情で動いちゃったってこと。御園に偉そうに言えたもんじゃないね」
そう言って、手元のグラスを傾ける。
私も握りしめたままだったグラスを、そっと持ち上げた。
神谷さんのいまの言葉が、そして昼間の行動が、指し示すもの。
それに対する私の感情が、胸の中で激しく暴れるのを抑えながら。
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