《3》

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「仰る通り、確かに文字が曲がっているかと思いますが、僅かなものです」 やや早口めに言えば、課長は私を睨んだまま腕組みをして、イスの背もたれに寄り掛かる。 ギッ…と鈍い音がした。 「…何だ?満足にコピーも取れない奴が逆ギレか?」 薄く笑みを作る課長は、私なんか屁でもない…と言わんばかりに余裕たっぷりに見える。 「いいえ、一般論を言っているまでです。明らかに曲がっているならまだしも…こんなほんの僅かなズレ、許容範囲内です」 「俺が気になるって言ってんだから、気になるんだよ。俺、完璧主義ってヤツだからな」 …完璧主義って…… 自分で言うものか?と思いつつ、同時に、この人何なの?!と嫌悪感が沸き上がってきた。 「それは課長のワガママというものではございませんか?」 自分がちょっと気になるからやり直せって、それは単なるワガママでしょう? よくもまぁ、こんな人が一課の長をやっているものだ。 第一…こんな数枚の紙切れ、一度目を通したらシュレッダーにかけられるか、細かく切ってメモ用紙代わりにされるのがオチだと思う。
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