《3》

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ピタリ…フロア内の空気の循環が停止した。 話し声やパソコンのキーを弾く音、書類を捲る音は途絶え、内線のけたたましい音だけが無情にも鳴り響いている。 途端に、突き刺すような無数の視線が私の背中に集中した。 その多くが、上司である羽鳥課長に向かって恐れ多い発言をした私を咎める視線なのだろう。 痛いくらいの圧力を感じる。 「……へぇ…言うねぇ…」 当の課長はというと、さほど気にしていないのか もしくは、元から私なんぞを相手にしていないのか… 余裕ありげに薄く笑いながら、顎に生えた髭を撫でている。 終わったな……と思った。 クビ確定。 遣り甲斐のない仕事だけれど、それでもほんの一月足らずでの退社は、私としては不名誉。 最低でも半年は踏ん張りたかったかな…と考えつつ、また就職活動の幕開けだと自分を奮い立たせる。
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