ずっとそばにいてくれたね 第12話

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「お姫さま、楽しいでしょうか?」 優輝さんが、執事のようにわざと尋ねる。 「もぉ、優輝さんったら」 「ほらっ、いい顔してたよっ」 優輝さんが携帯を見せる。 そこには、アヒルに囲まれて、笑顔いっぱいのあたしが写っていた。 「ホントだ!めちゃめちゃ楽しそうです。 っていうか、いつの間に撮ったんですか?」 本当に、そこには、哀しみの微塵も感じられないあたしが写っていた。 「優輝さん、ありがとうございます」 あたしの口からは、感謝の気持ちが溢れ落ちた。 「んっ」 そのまま、2人で湖面の周りを歩いた。 手は、強く握られたままだった。 「璃子は、笑顔の方がいい」 優輝さんは、前を向いたまま呟いた。 「ありがとうございます」 あたしは、笑いながら答えた。 「何も心配するな、璃子が心配するような、不安になるような事は、起こっていない」 優輝さんは、真っ直ぐ前を見つめたまま、力強く手を握りながら言った。 「えっ」 それは……和也さんの事!? 不意に言い渡された言葉に、あたしは、何も聞けないまま、確認出来ないままだった。 優輝さんは、突如振り返り、にっこり笑うと 「よしっ!璃子、帰るぞ!」 ってあたしに言った。 「はいっ!」 あたしは、あまりの勢いに、元気な返事を返した。 優輝さんは、握っていた手をそっと離して、そのままズボンのポケットに入れて、歩き出した。
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