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エプロンを着けて、お湯を出す。
思わず一緒にため息をついた。
カチャカチャと洗い物を始めたあたし。
手伝うよ。って言いながら和也さんが、キッチンに入ってきた。
後ろから、そっとお腹と胸の間に手を回され抱きしめられる。
和也さんが、少し屈んで、あたしの右頬に、自分の左頬を着けて囁いた。
「璃子、辛くないか?
ずいぶん酷い事を言われたんだろ?」
和也さんが、あたしの心を窺うように聞いてくる。
「………」
「璃子は、がんばりすぎるから、本当に辛くなる前に、俺に言えよ」
「……うん、ありがとう」
あたしは、静かに答えた。
「もったいないね」
動けなくなったあたしの代わりに、和也さんが出しっぱなしのお湯を止めた。
「璃子……」
和也さんが、耳元であたしの名前を甘く囁く。
背中に感じる和也さんの温もりと、鼓動に、あたしは優しく包まれる。
そっとあたしの顎に和也さんの細く長い指が触れ、そのままゆっくり後ろに振り向かされる。
「大丈夫。俺が、絶対に守るから」
言葉と同時に、優しく唇を塞がれた。
和也さん……
あなたがいれば……いてくれれば
あたし、がんばれます。
心の声は届かないけど
代わりに、あたしは、優しく甘く和也さんに包まれた。
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