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璃子を送り届け、俺は会社に戻った。
なんとなく、和也が俺を待ってる気がした事と、
久々の胸の痛みに、1人でマンションに居たくなかったから。
気持ちを切り替えるため、営業フロアに上がる。
すでにフロアは、人がまばらになっていた。
まず、和也のデスクを覗いた。
「……居るはずないか」
そうだよな。俺なんかじゃなく、璃子の帰りをマンションで待ってるはずだよな。
ひとり苦笑した。
人の減ったフロアは、とても静かで落ち着いた空間だった。
ガラス張りの休憩室の椅子にドッカリ腰かけ、窓から見える夜空を見上げた。
俺は……璃子が、最後に無邪気に言った言葉を思い出していた。
思わず胸に手を当てる。
「痛いな……治るかな」
俺は、久々の失恋の痛みを噛みしめた。
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