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「9時か……」
俺は、時計を見て呟いた。
優輝と璃子は、まだ戻らない。
それでも、なんとなく、優輝が会社に戻って来る気がして、たまった処理を片付けながら待っていた。
この約3日間、俺は、相手先と共に、必死に仕事を片付けた。
1日でも早く、冴子との誤解を解くため。
電話ではなく、きちんと顔を見て璃子と話すため。
その想いは報われ、1日早く戻って来れた。
早く璃子に逢いたくて、俺らしくないくらいに電話をかけた。
璃子からの連絡があった時、うれしくて……でも逸る気持ちを抑えて電話に出た。
まさか、優輝に代わるなんて思わずに。
怒ってる……んだよな?
いろいろ考えると、デスクにジッと座って居られなかった。
俺は、出張中の会計処理を階下の総務課長のデスクに持って降りた。
総務課長との他愛ない雑談を終え、ゆっくり階段を使って自分のフロアに戻る。
真っ暗な休憩室の椅子に座る優輝を、ガラス越しに見つけた。
やっぱり戻って来たか。
優輝とは、昔からの親友同士。大抵、姿を見れば、お互いの気持ちはわかる。
良くも……悪くも。
ただ、今夜の優輝は、
見たこともないくらいに、憔悴しているように見えた。
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