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俺は、優輝がいつも飲んでる缶コーヒーを買って、休憩室に近づいた。
普段なら、神経を張り巡らせている優輝が、すぐに俺の気配に気づくはずだが
今夜の目の前の優輝は、どっぷり自分の世界にはまりこんでいるようだった。
いったい何があったんだ!?
俺は、心を落ちつけ、休憩室に近づいた。
トントン……
開いたままの扉を叩いた。
「お疲れ」
俺は、声をかけて優輝にコーヒーを手渡した。
「あっ、あぁ。和也、まだ居たのか?」
優輝は、俺が居ることに驚いていた。
「R社どうだった?」
「あぁ。普通に顔合わせして来た」
考えているのは仕事の事ではなかったらしく、優輝は、かなり適当に答えた。
「誰に会った?」
「篠原部長と武藤課長」
「そうか、璃子の仕事ぶりはどうだった?」
「完璧だったよ。フォローのタイミングも上手く出来てた。和也のコピーって感じだった。よく教育されてたよ」
「そうか。それはよかった」
璃子の話題に振ると、それまでの口数の少なさとは違い、優輝の表情に変化が出た。
「篠原さん、璃子を食事に誘って来たぞ」
「あぁ、いつもの事だ。アイツ女に手が早いからな」
「一応、気をつけるように璃子にも言っといたけど、篠原は危ないぞ」
「あぁ。気をつけるように俺からも伝えておくよ」
暫しの沈黙……
会話が……うまく続かない。
「じゃあ、優輝、お疲れ」
あまりの優輝との空気の悪さに、俺は、休憩室を出ようと席を立った。
「本当に聞きたいのは、そんな事だったのか?」
出て行きかけた俺に、優輝は後ろから声をかけた。
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