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優輝は、俺が渡した缶コーヒーを開けると、ひとくち飲んだ。
「和也、璃子を抱いたって話は、もちろん嘘だから」
優輝は、ため息混じりで静かに言った。
「そんな事、わかってるよ」
俺は、ゆっくり優輝の隣の椅子に座りなおした。
「相変わらず、すごい自信だな」
優輝が、からかうように言った。
「自信?そんなもの無いよ。
お前には、負けるかもしれないって、内心怯えてた」
「嘘だろっ?自信と余裕がないヤツが、自分の大切な女を任せたりするか!?」
「お前だからだろっ」
俺は、ニヤリと笑って優輝を見た。
「ふっ……手の内は、お見通しって訳か」
ふたりで目を合わせ、鼻で笑った。
「更科、元気だったか?」
俺は、空気が和んだところで、話を変えた。
「アイツが元気が無いときがあるなら、ぜひ聞きたいねぇ」
優輝は皮肉った。
「何かあったのか?」
「あぁ。お前のせいで、珍しくすごい剣幕で怒られたな」
「俺のせいで?」
「初めからちゃんと璃子が彼女だって俺に言ってりゃぁ、こんな面倒な事にならなかっただろ?」
優輝が、初めて璃子に好意を持っていることを暗に認めた。
「優輝。お前は、きっとどんな状況でも、璃子に恋してたよ」
俺は、手に握った缶コーヒーを見ながら、そっと呟いた。
「それもそうだな。
でも、初めて更科のあんな真剣な顔を見たな。お前のせいで、友達なくすところだった」
優輝は、璃子とのこれまでの事と、更科に言われた言葉を思い出しているようだった。
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