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「じゃあ璃子は?」
「えっ、いいじゃん」
「見せてよ。きちんと彼女の運勢を知っとかないとね」
「……」
「もしかして、スゴいの引いちゃった?」
和也さんが、あたしの顔を覗き込む。
あたしは、下を向いたままコクりと頷いた。
自分もゆっくり見ていないおみくじをふたりで広げて見る。
「璃子」
さすがの和也さんも言葉を失った。
『 凶
仕事……うまくいきません。
待ち人……来ない。
恋愛……横槍が入って、大切な人を失います。じっと我慢して』
「最悪……」
あたしは、ポツリと呟いた。
「俺のと交換しようか?」
「そんなのダメだし」
「じゃあ、俺が璃子を守って行くしかないな。それでちょうど混ざって真ん中辺りかな?」
なんて言いながら和也さんが笑う。
「……」
「っていうか、これだけのおみくじの中から、凶を引くこと自体が、スゴい運勢なんじゃないかな?」
あたしは、ジトッと和也さんを見上げた。
「璃子、所詮おみくじだから」
どこまでも続くプラス思考の和也さんのフォローに、あたしは思わず吹き出した。
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