2138人が本棚に入れています
本棚に追加
「和也さん、ちょっとあそこに座りまする」
あたしは、神社からマンションまでの途中にある公園のベンチを指差した。
「いいよ。ちょっと酔いを醒まそうか?」
和也さんは、滑舌が悪くなってるあたしをクスクス笑った。
ベンチに座っても、ふらふらしているあたしを、和也さんの逞しい腕が、優しく支えながら包み込む。
頭は、和也さんの肩にもたれたまま、あたしは夜空を見上げた。
「和也さん、お月さまが綺麗だね」
「あぁ。冬の空は、空気が澄んでるから、とても綺麗に見えるな」
「うん」
「璃子」
「なぁに?」
「来年も、ずっと一緒に初詣に行こうな」
「……うん」
「ずっと一緒に歩んで行こう」
「うん」
和也さんの甘い囁きが、心の奥まで染み渡ってゆく。
幸せだなぁ。
うれしくて、そっと和也さんを見上げた。
微笑む和也さんの顔が、ゆっくりと近づく。
月明かりに照らされたふたりのシルエットが、静かに重なった。
最初のコメントを投稿しよう!