2122人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
「……ったく」
和也さんが呟く。
あたしたちは、ソファーに座り、出されたコーヒーをいただいていた。
今回は、オーダーは間に合わないからと、あたしの採寸表を元に、雰囲気に合うドレスを階下からチョイスして来てくださるのを待っていた。
「……寺坂さんって、面白い方ですね……」
初めて見る、ちょっと苛ついているように見える和也さんに、遠慮がちに呟いた。
「ただのエロオヤジだろっ!?」
あっ……苛ついてる。
「クスッ」
あたしは、思わず笑みが零れた。
「どうした?」
和也さんが、笑うあたしを怪訝そうに見る。
「だって、初めて見る表情だから……。お友達に見せる表情だなって思って」
「璃子……。それもそうだな」
和也さんは、一瞬で気持ちを切り替えたようで、柔らかく微笑んだ。
「和也さん、隼人さんのお詫びって、何なんでしょうか?」
「さぁなっ。ほっとけばいいよ」
和也さんは何か解っているようだったが、何も言わずに、尚もあたしに優しく微笑みかけた。
「はい」
あたしは、素直に頷いた。
「今回は、璃子のパーティーデビューだから、俺が一式プレゼントしたいんだ」
「いいの?」
「あぁ。ただ、デビューの相手が、俺じゃなくて、優輝っていうのが気に入らないけど……」
和也さんは、ポーカーフェイスのままだったけど、ちょっと照れてるようだった。
「自分がペアを決めたくせに……」
あたしは、ちっちゃな声で拗ねたように言い返した。
ふたりで見つめ合い、クスッと笑いあった。
最初のコメントを投稿しよう!