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「こんなに雨に濡れて……」
和也さんは、自分のバスタオルをあたしの頭にふわりとかけて軽くあたしの髪を拭くと、あたしの頬を手で触れた。
「ほら、こんなに冷たくなってる」
そう言うと、もう一度、あたしを強く抱きしめた。
「璃子」
和也さんは、あたしの耳元で甘く囁くと、大きな両手であたしの頬を包み、あたしの顔を掬い上げた。
上から見下ろす和也さんの瞳は、まっすぐに向けられていて、まるで、心ごと覗かれているようだった。
和也さんの真剣な眼差しに、あたしは逸らすことも出来ずに、吸い込まれるように、ただ、見つめていた。
「璃子」
「……」
「こんなに嫉妬してくれるなんて……うれしいよ」
一瞬、柔らかく微笑んだ和也さんの唇が、そっとあたしのそれに触れた。
「えっ!?違っ……」
「違うの?」
小首を傾げた和也さんが、優しく聞き返す。
「……」
……わかんない。
これは……嫉妬?なの?
「璃子が、初めて味わう感情だったのかな?」
「……」
なんだか、子ども扱いされてるみたいで恥ずかしい。そう認識した瞬間、あたしは一気に顔を赤らめた。
「璃子」
余裕の笑みを浮かべたまま和也さんの顔が、ゆっくり近づいてきた。
熱い眼差しが、あたしの瞳を捉えたまま離さない。
「んっ……」
絡まる視線はそのままに、優しくゆっくり食むように続けられるキス。
何度も何度も角度を変えながら続けられる口づけは……
あたしの毒牙を取り去るように……
不安を拭い去るように続けられ……
やがて、安心したと同時に、あたしの瞳はゆっくりと閉じられた。
ドサッ
身体の力が抜け、持っていた鞄が、床に大きな音をたてて落ちた。
……和也さん。
冷えきった身体が、温められ、いつものあたしを取り戻す。
ゆっくり時間をかけながら、魔法をかけられるかのように、あたしの身体は包まれた。
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