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あたしが真っ赤になり、ふたりが楽しそうに笑っていた時、和也さんの携帯が鳴った。
画面を見た和也さんは、一瞬で真顔に戻ると、
「ごめん。隼人からだからちょっといいかな?」
和也さんは、あたしの顔を見て言った。
「はい」
あたしは、コクりと頷いた。
「ここの窓から庭に出ろよ」
更科さんが、大きな窓ガラスを開け、和也さんは、そこから庭に出ながら携帯に出る。
渡グループの専務になるんだもん。隼人さんからの電話は、絶対だよね。
あたしは、和也さんの後ろ姿をそっと見つめた。
「聞いたんだ?」
席に戻った更科さんが、あたしの様子を窺いながら顔を見た。
「えっ!?」
「和也の事情?」
そっか。更科さんも高校の時からのお友達だから知ってて当然だったんだ。
「あっ、あぁ。……はい」
あたしは、慌てて返事をした。
「そっか。いつ?」
「……昨夜です」
答えながら、あたしの心には、麗香さんへの苦い思いが広がった。
「驚いた?」
更科さんは、あたしの様子を窺いながら聞いてきた。
「……少し」
「少し?」
「突然言われて、正直まだ解んないんです。実際には、すごい方なんでしょうけど、実感もないし、現実に見てもいないし、あたしの中では、まだ同じ会社の松本部長の和也さんで……」
あたしは、ゆっくり視線をお庭の和也さんへと移した。
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