1782人が本棚に入れています
本棚に追加
「心配?」
「……はい」
あたしの様子を窺う更科さんに、思わず小さく頷いた。
「どこが?」
「なんだか、まだ、想像でしかないから解らないんですけど、遠く感じるのかな?なんて」
きっと、更科さんの何でも受け止めてくれそうなBarのマスターのような空気が、あたしを素直にしたのかもしれない。
「素直だね」
「……すいません」
ふっと笑う更科さんに、思わず申し訳なく感じて謝った。
「そうだね。でも、あいつは大丈夫だよ。周りや肩書きが変わったとしても、和也自身は、絶対に変わらない」
「……」
解ってはいる。解ってはいるんだけど……
あたしは、少し俯いた。
「璃子ちゃん頼んだよ」
「えっ!?」
驚いて顔を上げると、更科さんは、真面目な顔をしてまっすぐあたしを見つめていた。
「和也の事。頼んだよ」
「えっ、あの、あたしでいいんでしょうか?」
あたしは、思わず心の本音を吐き出していた。
「和也が璃子ちゃんを選んだんだから、いいんだよ。
璃子ちゃんは、今のままで十分だよ」
「えっ!?」
更科さんは、柔らかな笑顔で語りかけた。
「そのまま、和也の傍で笑っててやって」
「えっ!?そんな事でいいんですか!?」
「あぁ、いいんだよ。璃子ちゃんは、和也にその癒しの笑顔をたくさんプレゼントしてやって。そしたら、和也は、めちゃめちゃがんばれるから」
「……」
更科さんは、穏やかな眼差しを向けた。
最初のコメントを投稿しよう!