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「……っ!?」
あたしのひと言は、和也さんの想像を越えていたのだろう。一瞬、和也さんは、驚いた表情を見せた。
あまりに大胆な要求をしたあたしも、受け入れてもらえるのか自信がなくて、視線をさ迷わせた。
でも、今、たった今、和也さんを、和也さんの愛を感じたかった。
和也さんは、何かを察したのか?すぐに優しい表情に戻ると、ふわりと甘い笑顔を浮かべて、あたしを抱きしめた。
一気に燃え上がった炎は、もう止められなかった。
受け入れられたあたしは、ぎこちないながらも、必死に和也さんにキスを落とした。
それを和也さんが、優しくリードしながら受けとめてくれる。
和也さんの手が、スルリとあたしの部屋着の上着の中に入って来た。
あたしの肌を優しく撫でる和也さんの掌が、あたしの心の炎をさらに煽った。
「……ぁっ」
あたしは、そのまま抱き上げられ、寝室へと運ばれた。
寝室の扉からリビングのオレンジ色の明かりが射し込み、寝室を妖しく照らす。
和也さんは、大切なものを扱うかのようにあたしをそっとベッドに浮かべた。そしてゆっくり組敷くと、焦らすかのように、ゆっくりあたしを見下ろした。
オレンジの明かりが、和也さんの横顔を艶っぽく照らす。
すでに、いっぱいいっぱいのあたしの耳元で、和也さんが掠れた声で囁いた。
「ごめん。
今夜は、手加減出来そうにないから……」
そのまま、あたしの首筋に和也さんの顔が埋まる。
あたしの胸がキュンと音を立てた。
『初めて味わう感情だったかな?』
先ほど帰宅後に言われた和也さんの言葉が、頭の中で何度も繰り返された。
和也さんの事を本気で好きだからだが、本気ゆえに、嫉妬がこんなに苦しいものだなんて知らなかった。
自分に自信がないからかもしれないが、ふたりの均衡が脅かされることが、こんなに心を焦らせ不安定にしてしまうなんて、自分を狂わせてしまうなんて、知らなかった。
和也さんに愛され満たされながら、あたしの瞳からは、涙が溢れた。
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