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後部座席でキャッキャ、キャッキャと盛り上がる怪獣を放置しながら、あたしは、和也さんにそっと聞いた。
「和也さん、村上姉さんの家を知ってるの?」
「あぁ、さっき坂本に連絡して調べたよ。そして、向こうでは坂本が待ってる手はずになってる」
さすがー。だから、余裕な様子で運転してたんだ。
相変わらず、仕事が早い。
「ほらっ着いた。村上、彼氏が待ってるぞ」
「あーっ、坂本さんだぁ!」
村上姉さんが、うれしそうな声をあげた。
マンションに着くと、とりあえず坂本さんと怪獣2匹を部屋へと運んだ。
「ミクちゃん、明日会社大丈夫?」
「ここから行くから、大丈夫だよぉ~」
「じゃあ、あたし帰るね。また会おうね」
「うんっ。璃子ちゃん松本部長と仲良ししてねぇ~」
とても飲み直しなど出来そうにないふたりを寝室とソファーにそれぞれ運んで寝せると、坂本さんが合鍵で戸締まりをして部屋を出た。
外に出た坂本さんは、和也さんとあたしにお礼を言うと、自分のマンションへ帰って行った。
「面白い子だったね」
「うん。ミクちゃんって言うんだって」
あたしの知りうるミクちゃん情報を提供して、和也さんとふたりで笑いあった。
「和也さん、迎えに来てくれてありがとう」
あたしは、帰りの車の中で、お礼を言った。
「全然。普通でしょ?俺が出来ることは手伝うよ」
カッコよすぎ……
和也さんは言わないけれど、あんな短時間で来るなんて、準備して待っててくれたんだよね?
あたしは、お酒の代わりに和也さんのサラリと甘い台詞に酔いしれながら帰宅した。
5月を迎えた翌朝、総務課長があたしの企画課の後任として少しの期間だけ配属することになった女性をフロアに連れて来た。
「初めまして。派遣会社から参りました早川美紅(はやかわ みく)です。よろしくお願いいたします」
かなり衝撃的な再会だった。
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