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「どうした?」
あたしは、心配そうに見つめる和也さんの顔に手を伸ばした。
「あたしだけって言って……
あたしだけだって……」
止まらぬ想いが、心にたまった不安を吐き出させた。
「璃子。
俺は、璃子だけを愛してるよ。
璃子だけだよ」
「……和也さん」
あたしの心の不安に応えてくれるように甘く発せられた和也さんの言葉が……
優しく包み込む逞しい腕が……
重なる肌が……
優しく落とされるキスが……
和也さんの存在のすべてが……
不安で押し潰されそうな、小さなあたしの心を包んで満たしてくれた。
********
……璃子。
何があったんだよ?
俺は、腕の中で眠りについた璃子の顔を眺めながら、髪を優しく撫でた。
そして、バレンタインの時の会議室での一件のあと、冴子と交わした会話を思い出していた。
…………
………………
「あらっ和也、仲直りは出来たの?」
会議室での一件の数日後、自販機の前で、冴子に声をかけられた。
「あぁ、冴子。この前は、ありがとな」
「っていうか、ケンカしてるなら、そうと言えばいいのに。何にも言わずに呼ぶから、空気読むのに時間がかかったじゃない」
「ケンカじゃないよ。ただ誤解してるみたいだったから、真実を知ってる冴子と話せば、誤解が解けると思ったんだ。
何か飲むか?奢るぞ」
「ふーん。っていうか、あたしを使っておいてコーヒー1本で済まそうなんてしないでよね。ちゃんと美味しいディナーを食べさせてもらうから」
「……了解」
俺は、苦笑いをした。
「和也……」
「んっ?」
「あんた浮気でもしてるの?」
冴子は、自販機のボタンを押しながらサラリと聞いた。
「はぁ!?隼人じゃあるまいしあり得ないだろ?」
「ちょっと、隼人は、そんなショボいことはしないわよ」
冴子は、キッと睨み付けた。
「何でだよ?」
俺は、睨み付ける冴子にお構いなしで話を続けた。
「うーん。璃子のチョコレートの誤解には、女の影が見えたから」
「女!?」
「うん。だから、てっきり和也が浮気でもしてるんだと思って釘を刺してやろうと思ったんだけど…」
「100%あり得ない」
「よね?」
冴子は、何かを考えているようだった。
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