◇◇ 第31章 新たな出会いと旅立ち ◇◇

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「バレンタインのチョコの事だよ」 「えっ!?」 思わず和也さんを見上げた。 「冴子が、会議室で璃子の誤解を解いてくれた時の事だよ」 「えっ!?でも、大切なものって」 「俺の大切なものって言ったら?」 和也さんの表情が次第に真顔になり、優しい眼差しが浴びせられる。 「……」 「解んない?」 「……でも、あたし、『もの』じゃないし」 「屁理屈だなっ」 そう言った途端に、グイッと腕を引かれて、あたしはビルの谷間に引き込まれた。 えっ!? あっという間に和也さんの腕の中に包まれた。 和也さんの右手が、あたしの顎をスッと掬い上げる。 まっすぐに向けられた視線が突き刺さった。 「俺が、失いたくない大切なものって言ったら、璃子の事でしょ」 あたしは、そんな甘い言葉を目の前で食らった上に、そのまま唇を塞がれた。 くぅーっ、完敗。 和也さんが歓迎会に参加してすぐから、ずっと気になってて、ろくにご飯が喉を通らなかったのにーっ。 ずっと、冴子さんがチラリッと向ける視線に、『気にしてません』って無理してポーカーフェイス決め込んでたのにーっ。 もぉーっ! もぉーっ!! また、冴子さんと和也さんに、してヤられた。
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