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「バレンタインのチョコの事だよ」
「えっ!?」
思わず和也さんを見上げた。
「冴子が、会議室で璃子の誤解を解いてくれた時の事だよ」
「えっ!?でも、大切なものって」
「俺の大切なものって言ったら?」
和也さんの表情が次第に真顔になり、優しい眼差しが浴びせられる。
「……」
「解んない?」
「……でも、あたし、『もの』じゃないし」
「屁理屈だなっ」
そう言った途端に、グイッと腕を引かれて、あたしはビルの谷間に引き込まれた。
えっ!?
あっという間に和也さんの腕の中に包まれた。
和也さんの右手が、あたしの顎をスッと掬い上げる。
まっすぐに向けられた視線が突き刺さった。
「俺が、失いたくない大切なものって言ったら、璃子の事でしょ」
あたしは、そんな甘い言葉を目の前で食らった上に、そのまま唇を塞がれた。
くぅーっ、完敗。
和也さんが歓迎会に参加してすぐから、ずっと気になってて、ろくにご飯が喉を通らなかったのにーっ。
ずっと、冴子さんがチラリッと向ける視線に、『気にしてません』って無理してポーカーフェイス決め込んでたのにーっ。
もぉーっ!
もぉーっ!!
また、冴子さんと和也さんに、してヤられた。
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