◇◇ 第31章 新たな出会いと旅立ち ◇◇

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蕩けるような甘いキスを落とした和也さんが、ゆっくりと顔を離す。 その顔は、悔しいくらいに満足げだった。 「璃子っ」 「……」 「璃子っ」 「……こんな所でキスしなくても」 「嫌だった?」 「……」 嫌じゃないけど…… 「璃子ちゃん」 「……」 「機嫌なおして」 「……」 「アイス買って帰ろうか?」 「子どもじゃないしっ」 「知ってるよ。俺、この前、ベッドに誘われたし」 「……っ!?」 もぉーっ!きっと嫉妬に駆られて『抱いて』って言ったことを言ってる。 「また、あの時の璃子に逢いたいな」 「あっ……あれは、もう封印したから会えないと思うよ」 「それは残念。あんな大人の璃子も好きだったんだけど」 イタズラな眼差しが、あたしを煽る。 「もぉーっ」 あたしは、ますます真っ赤になった。 「ごめん。からかいすぎた。俺は、素直に自分の気持ちを表現する璃子が大好きなんだ……」 ふわりと抱きしめられて、耳元でそんな甘い事を言われたら、もう何にも言えなくて…… 「和…也さん……」 「帰ろうか?」 「……ぅん」 あたしは、小さく頷いた。 手を繋ぎ、ゆっくり並んで歩く帰り道。 どんどん近づいてゆく2人の心の距離が、会話が、『大丈夫だよっ』って、あたしの心に自信をくれた。
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