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5月の連休も明け、あっという間に2週間が過ぎていた。
村上姉さんは、デスクの前の『かわいがる限定』の場所に美紅ちゃんが来てから元気を取り戻し、楽しそうに仕事をしている。
美紅ちゃんも、すっかり慣れて、まさか派遣社員とは思えない空気を醸し出していた。
あたしも、秘書室のタイミングに慣れてきて、休憩をうまく取れるようになっていた。
「ちょっとコーヒー買ってきます。藤井さんもいかがですか?」
「ええ、大丈夫よ。ゆっくりいってきなさい」
「ありがとうございます」
あたしは、休憩室へと向かった。
フロアの角を曲がり、喫煙所の自販機を見ると、美紅ちゃんと優輝さんが並んで立っているのが見えた。
2人の様子を見ながら近づく。
優輝さんは、電話をかけているのか?慌てた様子でコーヒーを買うと、美紅ちゃんにキラリッと光る笑顔を向けてエレベーターへと向かった。
美紅ちゃんが、立ち去る優輝さんを目で追う。
キラキラと輝くスワロフスキーのクリスタルの石が零れ落ちるような……
シャラーンって澄んだ音が聞こえた気がした。
あっ……堕ちた。
咄嗟にそう感じた。
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