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つまり、専務の話を聞いたのはカフェで……と言うことになる。
『女の人だよ』
と、璃子が言ったと言うことは、璃子よりも歳上。
そして、あの有名ホテルのカフェに行く人間。璃子の友達なら、もっとカジュアルなカフェに行くはず。
誰と行ったのか、聞いてもなかなか言いたがらなかった璃子。
さっき、俺を見つめた熱っぽい視線といい、最中での涙といい、『あたしだけって言って』という言葉といい。
明らかに、誰かに嫉妬している女の表情だった。
一体、誰に振り回されている?
俺は、考えを巡らせた。
璃子がおかしな行動を見せたのが、バレンタインの時。つまり、その前にその女に会った事になる。
璃子が、潜在意識の中で『負けるかも』と思ってしまう相手……
そんな奴がいるか?
年明けまでは普通だったし、じゃあ、璃子が『負けるかも』と感じるような人間に出会う場所……
1月のパーティー!?
あの時なら、隼人からチョコレートを受け取っている人間がゴロゴロいたが……
多すぎて解らない。
誰に会ったんだよ?
俺は、眠っている璃子の頬を撫でた。
疲れきった表情のまま眠っている璃子の瞳から、涙が一滴流れ落ちた。
俺にきちんと話せば、全部不安も何もかも吸い取って解決してやるのに。
だが、必死に乗り越えようと成長している姿も、またこの上なく愛しい。
「璃子。大丈夫だよ。俺が大切なのは、璃子だけだよ」
そっと璃子の涙を拭いながら、俺は静かに囁いた。
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