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「おはよう和也さん」
ちょっと拗ね気味に言いながらも、バッチリ目が合った。
和也さんは、そのままゆっくりあたしを抱き寄せた。
「おはよう。体調はいかがかな?」
「んっ、大丈夫だよ」
「じゃあ、心の調子は?」
「……十分元気です」
「じゃあ、更科のところに行けそうかな?」
「うん。行きたい」
「じゃあ、22歳の璃子ちゃんを連れていこうかな」
「お願いします」
もぉ。
あたしは完璧、和也さんの手のひらの上で転がされている。
支度を整え玄関に向かうと、昨夜のびしょ濡れのあたしが作った水溜まりが薄く残っていた。
「和也さん、昨日は、ごめんなさい」
靴を履く和也さんに、背後からぽつりと謝った。
「いいよ。俺の事が大好きでたまらないって告白されたようなものだから」
和也さんは、恥ずかしげもなくサラリと甘いことを言うと、ニヤリと笑った。
「……」
和也さんたら。甘すぎて、聞いてるこっちが恥ずかしいし、何を言ってもプラスに捉えちゃうんだから。
ひとりぶつぶつ言いながら靴を履くと
「ほらっ行くよ」
和也さんは、あたしの手を取り、勢いよく扉を開けた。
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