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「でも、璃子ちゃん、とっても綺麗だった。あんな特別な松本部長の笑顔を見せてもらえるなんて、女としては幸せだよね」
まだ酔っていない真面目な美紅ちゃんは、全然フォローにもならない台詞を真顔で呟いた。
「綺麗だったんだぁ?」
「綺麗でした」
冴子さんの問いかけに、美紅ちゃんが、しみじみと答える。
……最悪。
あたしは、ガックリ項垂れた。
「いやぁん!いつの間にか、璃子も大人になっていたのねぇ~。姉さん全然知らなかったわぁ~」
村上姉さんが、おしぼりで目頭を押さえるフリをしながらあたしの顔をチラッと盗み見て、しみじみとなった空気をぶち破った。
「もぉー村上姉さんったら」
あまりの恥ずかしさに顔を赤らめたあたしを、3人が声をあげて笑った。
誰ですか?
派遣会社に新たなオオカミを発注したのは!?
誰ですか?
真面目な人の教育を怪獣に任せているのは!?
ヤバい、ヤバすぎる。これ以上オオカミが増えたら、赤ずきんちゃんのあたしは、どしたらいいのよーっ。
「ずいぶんと盛り上がってるね」
動揺で慌てるあたしの心の中に、更なる声が降ってきた。
「へっ!?」
ビールのグラスを持ちながら、優輝さんが村上姉さんとあたしの間に座ってきた。
「んっ?」
変な声をあげたあたしを優輝さんが、覗き込む。
「えっ、全然盛り上がってません。大丈夫です」
「どうした璃子。もう酔ったのか?顔真っ赤だぞ?」
「えっ!?そんなはずないです!何にもないです。大丈夫です」
「璃子、あんまり飲みすぎるなよ」
あまりにおかしな返答を繰り返すあたしを優輝さんは不思議そうに見て笑った。
後ろでは、冴子さんと村上姉さんが、声を殺して、肩を揺らして笑ってた。
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