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そして、和也さんが、起きそうにない事を確認すると、あたしの力では寝室まで動かすことの出来ない和也さんを見て、1度言ってみたかった台詞を呟いた。
「和也さんったら、手がかかるんだからぁ~♪くふっ」
思わず優越感に浸りながら、初めて言った台詞に笑みが零れた。
クスクスッ……
いっつも迷惑かけてるクセに、今日はなんだか和也さんのお世話をしている気分が堪らなく新鮮で、あたしの心を踊らせた。
あたしは、ソファーの端に頬杖をつくと、とても幸せな気分で、眠っている和也さんを眺めた。
「がんばりすぎだよ。もっとスマートに片付けないと」
なんて、ちょっと上から目線で隼人さん風に言ってみながら、和也さんの頬っぺたをムニッと摘まんでみた。
「んっ……んんっ……」
突然動いた和也さんに、びっくりして飛び退いた。
動いたはずみで、あたしの方を向いた和也さんを、静かに見守りながら、動かない事を確認して、もう一度そっと近づく。
「あたし、ちゃんとがんばるから、あんまり遠くに行かないでね」
眠る王子さまに、自分でも驚くほどに素直な言葉が零れた。
『ずっとそばにいさせてくださいね』
そんな小さな願いを込めて、誓いをたてるように、あたしは、和也さんにそっと優しいキスをした。
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