1811人が本棚に入れています
本棚に追加
和也さんは、初日に相応しく真面目で好印象のイメージを与えるスーツとネクタイを合わせていた。
「あたし、下までお見送りに行った方がいい?」
あたしは、どうしたらいいのか解らずに、革靴を履く和也さんに聞いた。
「ふっ。璃子、そんなたいした事じゃないよ。俺は何も変わらないんだし。お互い仕事してるんだから、変な気は遣わずに今まで通り普通にね」
一瞬吹き出した和也さんが、あたしに分かりやすく説明した。
「……」
「どうしてもっていうなら、結婚して璃子が仕事辞めたら毎日下まで見送って」
ふわりと左頬に和也さんの右手が添えられた。
「えっ!?」
ボッと、一気に紅く染まったあたしを確認すると
「じゃあ、行ってくるよ」
って言いながら、イタズラな笑顔を浮かべて、わざとリップ音を鳴らしてキスをした。
「いっ、いってらっしゃい」
動揺でバクバクしているあたしは、それだけ言うと手を振った。
「いってきます」
サラリとクールに、普段と変わらず、和也さんは出かけて行った。
最初のコメントを投稿しよう!