◇◇ 第32章 瞬く小さな光 ◇◇

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和也さんは、初日に相応しく真面目で好印象のイメージを与えるスーツとネクタイを合わせていた。 「あたし、下までお見送りに行った方がいい?」 あたしは、どうしたらいいのか解らずに、革靴を履く和也さんに聞いた。 「ふっ。璃子、そんなたいした事じゃないよ。俺は何も変わらないんだし。お互い仕事してるんだから、変な気は遣わずに今まで通り普通にね」 一瞬吹き出した和也さんが、あたしに分かりやすく説明した。 「……」 「どうしてもっていうなら、結婚して璃子が仕事辞めたら毎日下まで見送って」 ふわりと左頬に和也さんの右手が添えられた。 「えっ!?」 ボッと、一気に紅く染まったあたしを確認すると 「じゃあ、行ってくるよ」 って言いながら、イタズラな笑顔を浮かべて、わざとリップ音を鳴らしてキスをした。 「いっ、いってらっしゃい」 動揺でバクバクしているあたしは、それだけ言うと手を振った。 「いってきます」 サラリとクールに、普段と変わらず、和也さんは出かけて行った。
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