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就業時間が終わり、あたしは携帯を確認した。
お互いにそうそう個人の携帯に出れる訳ではない仕事だから、連絡はメールでって約束をしていた。
携帯にメールは届いておらず、どうやら、今夜の和也さんはまっすぐ帰宅するようだった。
あたしは急いで帰宅した。
あたしの時もそうだったけど、部署が変わるだけでも大変なんだもん。会社が変わるなんてもっと大変なはず!
あたしは、想像は難しいけれど、それでも和也さんの置かれた状況を自分に置き換えて考えて、絶対和也さんも疲れて帰宅すると踏んで、手料理とお風呂の準備を整え帰宅を待った。
「ただいま」
今までよりも少しだけ遅くに和也さんは帰宅した。
「お帰りなさい」
あたしは、子犬のように玄関まで飛び出した。
いつも通りに、和也さんの右手があたしの左手を引き寄せ、小走りだったせいか、そのままバフンッと、和也さんの胸に飛び込んだ。
「ただいま璃子」
「お帰りなさい和也さん」
「今日はどうだった?」
「いつも通りだったよ。和也さんは?」
「璃子に会ったら忘れちゃったな」
「えっ!?」
思わず顔を上げたら……
「チュッ♪」
あっ……
一瞬で、あたしの今夜のファーストキスは奪われ、驚くあたしをよそに、いつもよりもにっこり笑っている和也さんの笑顔があった。
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