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「和也さん」
歩きと小走りを繰り返しながら帰りついたあたしは、駐車場の車の前に立っている和也さんを見つけた。
携帯を見ていた和也さんが、あたしに気づいて微笑む。
あたしは、浅い呼吸を繰り返しながら、上がった息を整えた。
「そんなに急がなくてもよかったのに」
少し笑いながら、落ち着いた動作で、和也さんが携帯を胸ポケットになおす。
「だって…、待ち合わせて…デートだ…なんて、うれしくて……」
まだ、息が上がっていて、切れ切れで返すあたしの言葉を和也さんが、微笑みながら聞いていた。
「おかえり璃子」
「ただいまっ、和也さん。今日は、ずいぶんと早かったんだね。何かあったの?」
あたしの質問に、一瞬、和也さんの瞳の奥が揺らいだ気がした。
「あぁ、お互いに1ヶ月がんばったし、特に璃子が俺を支えてくれたから、お礼も兼ねて、ゆっくりしようと思ったんだよ。いけなかったかな?」
和也さんが、にこりと笑顔を向ける。
サラリと告げられる感謝の気持ちと、この笑顔には、敵わない。
「ありがとう。とってもうれしいよっ」
って、あたしも笑顔をお返しした。
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