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車に乗り込みマンションを出発した。
車は、街とは反対方向へと向かい始めた。
「街じゃないの?」
「どちらかといえば、郊外かな」
「えっ!?どこに行くの?」
「いいから。黙ってついておいで」
ハンドルを握る和也さんの横顔は、とても楽しそうに微笑んでいる。
車は、1時間ほど郊外に向かって走っていた。
「ずいぶんと田舎だね?」
辺りは街灯もまばらで、行き交う車も少ない。あたしは、少し心配になって和也さんに聞いた。
「大丈夫だよ。置いて帰ったりしないから」
「その言葉が、とても怖いんだけど」
「ハハハッ……」
和也さんは、相変わらず楽しそうに微笑んでいた。
「さぁ、着いたよ」
ヘッドライトに照らされた建物は、狐の嫁入りの昔話にでも出てきそうな、大きな古民家だった。
「ここ?」
「隠れ家的レストランってところかな」
心配そうなあたしに、和也さんが説明した。
車から降りると、ヘッドライトが消えたせいで、辺りは真っ暗だった。
お店の入口の両サイドに掛けられた大きな提灯が、ぼんやりと辺りを照らす。
遠くで川のせせらぎが聞こえた。
あたしは、予想出来ない恐怖に、ゴクリッと喉を鳴らした。
「クスッ。行こうか」
和也さんは、あたしの様子を笑いながらエスコートした。
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