◇◇ 第32章 瞬く小さな光 ◇◇

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車に乗り込みマンションを出発した。 車は、街とは反対方向へと向かい始めた。 「街じゃないの?」 「どちらかといえば、郊外かな」 「えっ!?どこに行くの?」 「いいから。黙ってついておいで」 ハンドルを握る和也さんの横顔は、とても楽しそうに微笑んでいる。 車は、1時間ほど郊外に向かって走っていた。 「ずいぶんと田舎だね?」 辺りは街灯もまばらで、行き交う車も少ない。あたしは、少し心配になって和也さんに聞いた。 「大丈夫だよ。置いて帰ったりしないから」 「その言葉が、とても怖いんだけど」 「ハハハッ……」 和也さんは、相変わらず楽しそうに微笑んでいた。 「さぁ、着いたよ」 ヘッドライトに照らされた建物は、狐の嫁入りの昔話にでも出てきそうな、大きな古民家だった。 「ここ?」 「隠れ家的レストランってところかな」 心配そうなあたしに、和也さんが説明した。 車から降りると、ヘッドライトが消えたせいで、辺りは真っ暗だった。 お店の入口の両サイドに掛けられた大きな提灯が、ぼんやりと辺りを照らす。 遠くで川のせせらぎが聞こえた。 あたしは、予想出来ない恐怖に、ゴクリッと喉を鳴らした。 「クスッ。行こうか」 和也さんは、あたしの様子を笑いながらエスコートした。
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