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「そろそろ行こうか」
「うん」
和也さんの合図で、女将さんが、お部屋に伝票を持ってきた。あたしに見えないように、和也さんと女将さんがスマートにお会計を済ませる。
「とても美味しくいただきました」
「ありがとうございます」
和也さんの言葉に、女将さんが答える。
「ちょうどお時間もよろしいかと思います。履き物は中庭にご用意させていただいておりますので、そのまま右側へとお進みくださいませ」
「ありがとうございます。では、そうさせていただきますね」
女将さんと和也さんとの間で、あたしにはよく解らない会話が交わされた。
「じゃあ、璃子行こうか」
「はい」
あたしは、女将さんに「ごちそうさまでした」とご挨拶して、和也さんの後について部屋を出た。
来たときとは違う出入口へと女将さんが案内し、和也さんと向かう。しかしながら、そこには女将さんが言った通りに和也さんとあたしの靴が並べられていた。
「ありがとうございました。またのお越しをお待ちいたしております。どうぞお足元にお気をつけて」
女将さんに見送られ、ふたりで並んで中庭へと出た。
「璃子、暗いから気をつけて」
そう言われると同時に、あたしの右手は和也さんの左手に絡めとられた。
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