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「どこいくの?」
「んっ。少し散策?」
「真っ暗なのに?」
お店から続く石畳は、時折ぼんやりとした足元を照らすライトがあるだけで、周りは全く何にも見えないほど、真っ暗だった。
「おいで」
それでも和也さんは、あたしの手を引いて暗がりへと導いた。
少しずつ目が慣れてきて、うっすらと見え始めてきたものの、先へと続く階段を踏み外さないように目を凝らして見ながらゆっくり降りた。
気づけば、だんだん川のせせらぎが大きく聞こえ始めていた。
その時、うっすらと小さな光がひとつ瞬いた。
「えっ!?」
あたしは驚いて小さく声を上げた。
その先を見ると、またひとつ、またひとつと小さな光が増えてゆく。
「あっ!和也さん見て!」
「気がついた?」
「もしかしてホタル!?」
「そうだよ」
暗がりの中、和也さんの優しい眼差しと、小さな発見に驚くあたしの眼差しとが絡まった。
小さな光が、あたしたちを川辺へと導く。
あたしたちは、吸い寄せられるように、ゆっくりと光の導く方へと歩みを進めた。
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