1811人が本棚に入れています
本棚に追加
ひとつ、またひとつと増え続ける小さな光に、あたしの心は興奮して、少女のように跳び跳ねた。
足元を照らす小さな光たちを愛でながら、つまづかないように和也さんに手を引かれるままついてゆく。
「璃子、前を見てごらん」
しばらく歩いた和也さんの足が止まり、足元ばかりを見ていたあたしは、言われるがままに前に視線を上げた。
「うわぁ……っ」
目の前の対岸には、無数のホタルが群生していた。
まるで夜空の星たちが、お月さまには内緒で、こっそり地上に遊びに舞い降りたかのように、多くの優しい光が瞬いていた。
そのあまりの数の多さと美しさに、あたしは言葉を失った。
はじめは、バラバラに瞬いていた光が、少しずつ揃い始め、呼応するかのように、一瞬だけ揃う瞬間が訪れた。
「あっ!揃った」
「あぁ」
あたしは、初めて見るホタルの舞いに、しばし瞳を奪われた。
「気に入った?」
「うん。初めてこんなにたくさんのホタルの光を見たよ」
「よかった」
「これを見せようと思って、今夜、急にお食事に誘ってくれたの?」
「まぁ……そうだね。少し璃子とゆっくり話がしたかったから……」
和也さんは、あたしの言葉に、なんだか歯切れの悪い返事を返した。
最初のコメントを投稿しよう!