◇◇ 第32章 瞬く小さな光 ◇◇

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ひとつ、またひとつと増え続ける小さな光に、あたしの心は興奮して、少女のように跳び跳ねた。 足元を照らす小さな光たちを愛でながら、つまづかないように和也さんに手を引かれるままついてゆく。 「璃子、前を見てごらん」 しばらく歩いた和也さんの足が止まり、足元ばかりを見ていたあたしは、言われるがままに前に視線を上げた。 「うわぁ……っ」 目の前の対岸には、無数のホタルが群生していた。 まるで夜空の星たちが、お月さまには内緒で、こっそり地上に遊びに舞い降りたかのように、多くの優しい光が瞬いていた。 そのあまりの数の多さと美しさに、あたしは言葉を失った。 はじめは、バラバラに瞬いていた光が、少しずつ揃い始め、呼応するかのように、一瞬だけ揃う瞬間が訪れた。 「あっ!揃った」 「あぁ」 あたしは、初めて見るホタルの舞いに、しばし瞳を奪われた。 「気に入った?」 「うん。初めてこんなにたくさんのホタルの光を見たよ」 「よかった」 「これを見せようと思って、今夜、急にお食事に誘ってくれたの?」 「まぁ……そうだね。少し璃子とゆっくり話がしたかったから……」 和也さんは、あたしの言葉に、なんだか歯切れの悪い返事を返した。
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