◇◇ 第32章 瞬く小さな光 ◇◇

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あたしは、そっと和也さんの横顔を見上げた。 和也さんは、何かを考えているのか?ジッと厳しい眼差しで、対岸を見つめていた。 「和也さん?」 「んっ?」 「何かあったの?」 「ホタル綺麗だね」 「えっ……」 和也さんは、あたしの質問には答えず、話題をホタルに戻した。 「綺麗だね」 「……うん。本当に綺麗」 あたしは、それ以上、和也さんの心の奥には踏み込まず、言われるがまま、再びホタルを眺めた。 どのくらい眺めていたのだろうか? まるで、星たちと一緒に呼吸をしているかのような、ふたりだけで宇宙の空間に漂っているようだった。 突然、和也さんと繋がっている右手が、ギュッと握られた。 「……璃子」 「なぁに?」 名前を呼ばれ、返事を返したものの、それ以上何も言わない和也さんを、ゆっくり見上げた。 「ニューヨークに行くことになった」 突然告げられた言葉は、あたしだけでなく、地上に舞い降りた星たちまでも驚かせたのか?一瞬、目に見えるすべての光が、地上から奪われた気がした。
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