1811人が本棚に入れています
本棚に追加
あたしは、そっと和也さんの横顔を見上げた。
和也さんは、何かを考えているのか?ジッと厳しい眼差しで、対岸を見つめていた。
「和也さん?」
「んっ?」
「何かあったの?」
「ホタル綺麗だね」
「えっ……」
和也さんは、あたしの質問には答えず、話題をホタルに戻した。
「綺麗だね」
「……うん。本当に綺麗」
あたしは、それ以上、和也さんの心の奥には踏み込まず、言われるがまま、再びホタルを眺めた。
どのくらい眺めていたのだろうか?
まるで、星たちと一緒に呼吸をしているかのような、ふたりだけで宇宙の空間に漂っているようだった。
突然、和也さんと繋がっている右手が、ギュッと握られた。
「……璃子」
「なぁに?」
名前を呼ばれ、返事を返したものの、それ以上何も言わない和也さんを、ゆっくり見上げた。
「ニューヨークに行くことになった」
突然告げられた言葉は、あたしだけでなく、地上に舞い降りた星たちまでも驚かせたのか?一瞬、目に見えるすべての光が、地上から奪われた気がした。
最初のコメントを投稿しよう!