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しばらくして、社長室から出てきた和也さんが、藤井さんに挨拶をする。あたしと藤井さんは、それぞれのデスクの前に立ち、和也さんを迎えた。
「藤井さんお世話になりました。ありがとうございました」
和也さんは、深々と頭を下げた。
「松本部長、ご活躍をお祈りいたしております。
あと、いただきましたヒナ鳥は、松本部長の代わりにしっかり育てさせていただきますね」
「ビシバシよろしくお願いいたします」
藤井さんと和也さんが、あたしを見て微笑んだ。
秘書室から出た和也さんに続き、社長がフロアへと歩み出る。
「みんなちょっといいかな」
大きな声でかけ声をかけると、一斉にフロアの視線が社長と和也さんに集まった。
同時に企画課から立派な花束が届けられ、大きな拍手と多くの温かな笑顔に包まれた。
あたしは、社長の粋な計らいと、みんなに惜しまれ、温かく送りだされる和也さんを見ながら、目頭が熱くなると同時に、本当に今日で最後なんだという思いが一気に込み上げ、胸がギュッと掴まれたように痛んだ。
あたしは、そっと静かにその場から離れ、ひとり屋上へと向かった。
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