ずっとそばにいてくれたね 第25話

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「仕事がんばれよ」 「はい」 「みんなに愛される気配りの出来る秘書になれ」 「はい」 「璃子なら大丈夫だから。俺が育てた『ヒナ鳥』だから」 『ヒナ鳥』って…… 思わず和也さんの顔を見上げたら、いじめっこみたいな笑顔を浮かべて笑っていた。 「松本部長も、新天地でがんばってくださいね」 「俺を誰だと思ってる?」 「そうでしたね。松本部長様でした」 あたしもわざと言い返した。 「松本部長」 「んっ?」 「お疲れさまでした。 それと、ありがとうございました」 「あぁ……」 ぽつり、ぽつりと呟かれるお互いの言葉が、今日が最後なんだと確認させた。 「淋しくなります」 暫しの沈黙のあと、あたしの口から、本音が零れ落ちた。 「……璃子」 そっと肩に乗せられた手から和也さんの温もりが伝わる。 自然とお互いの視線が絡み合った。 「応援してるよ」 甘い笑顔と言葉が降り注がれ、傾けられた和也さんの顔がゆっくりと近づいてくる。 「よろしいんですか?ここ会社ですけど?」 あと少しのところで、声をかけた。 目の前でクシャっと目尻を下げ、にっこり笑った和也さんとあたしの笑顔が重なる。 「もう就業時間が終わったからいいんだよ」 言い終わると同時に、あたしの唇には柔らかな感触と和也さんの温もりが広がった。 和也さんは、退職の最後に、会社では見ることの出来ない特別な笑顔と、甘いキスをあたしにプレゼントしてくれた。
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