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「「それで!それで!」」
待ちきれない冴子さんと村上姉さんが、会話を煽る。
「見つめ合うふたりは、甘い空気に包まれてて」
えっ!?ふたりって?
会話の流れが、一気に急流の如く悪しき方に流れ出した。
「「どこで!どこで!」」
「屋上で」
えっ!?屋上?
もしかして……もしかして……!?
さすがのあたしも気がついた。
でも、時すでに遅し……
「「何してたの!?」」
「キスしてたのぉ」
「「きゃあ~ヤらしーいっ」」
ゴォーン!
あたしの頭の上に、特大のタライが落ちた気がした。
あぁーっ、なぜ気がつかなかったんだ。みんながイキイキ会話を始めた瞬間に感じた違和感……
あたしは、3びきのオオカミの餌食になっていた。
「じゃあ、説明もしくは言い訳聞こうか?んっ!?璃子ちゃん♪」
久々に登場の村上刑事が、うれしそうに、あたしの方へ身を乗り出した。
「……いえっ、あの」
「はいっ逮捕!」
あたしは、何も言えずに真っ赤になった。
「ごめんね璃子ちゃん。いなくなった璃子ちゃんが泣いてるのかもって思ったら心配で、屋上に探しに行ったら見てしまって……」
美紅ちゃんが真っ赤になりながら申し訳なさそうに謝る。
「だから、大丈夫だから行くなって言ったのに。美紅ったら真っ赤になって慌てて戻って来るんだもんっ。かわいかったけどっ」
「ナハハハ……」
村上姉さん、『かわいかったけどっ』じゃないですよ。あたしは、乾いた笑いを返すしかなかった。
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