◇◇ 第35章 The birthday in NY ◇◇

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「隼人さんもお嬢様の気まぐれって解っていながら、青木社長の言うことを断れないって事は、かなり日本もキツい状況なんでしょうか?」 「そうだろうな」 俺は、昼間にかかってきた隼人の様子を思い出しながら、拓巳に答えた。 「1日も早く、おふたりが日本で揃わないといけないですね」 「そうだな。早くこっちを終わらせないとな」 「ええ。早く日本とニューヨークの往復生活から俺を解放してください」 拓巳は、得意のジョークで場を和ませながらニヤッと笑った。 ホッとひと息つきながらジントニックをひと口流し込む。 カランッとグラスの氷が音をたて、拓巳が、遠慮がちに呟いた。 「松本さん、さっきの……」 「んっ?」 俺は、拓巳の呼び掛けに、拓巳の横顔を見た。 「さっきの。麗香さんが勘違いした表情は……。 璃子の事を考えていたんですか?」 拓巳の瞳は、グラスを見つめたままだった。 「……あぁ」 俺は、素直に認めた。 「はぁーっ。……ったく。あの女の前で気を抜くのは止めてください!」 「すまなかった」 ため息混じりで注意をする拓巳に、俺は素直に謝った。 「何度も声をかけたのに、カシャッなんて撮られるんっすもん」 「本当にすまなかった」 「まぁ、良いもの見れたからいいんですけどね」 拓巳は、俺を見ると、にっこり笑った。 そして、また、ゆっくりとジントニックをひと口飲むと、静かに続けた。 「そうですか。 璃子は……アイツ、松本さんにあんな表情させるんですね」 「あんな表情?」 「俺が言うのも気持ち悪いですけど、見たことないくらい穏やかで、惚れちゃうくらいに甘く優しい表情でした」 「……そうか」 「はい」 「惚れるなよ」 「そんな趣味ないですから」 俺は、拓巳と目を見合わせて笑った。
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