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「それはそうと、璃子のヤツ、お盆休みに会いに来るとかいう考えはないんですかね?」
「今年は無理だよ」
「どうしてですか?」
「んっ?日直もあるはずだし、秘書室だから、社長のフォローもあるし。多分休みが無いんじゃないかな?」
「何でもご存知なんですね」
「いいや。会社の事と、この1年の事だけだよ。璃子の事なら、お前の方が知ってるだろ?」
俺と拓巳は、静かにグラスを傾けた。
「松本さん」
「んっ?」
「アイツ……璃子の事、本気なんですよね?」
「あぁ」
「アイツ、今も、きっとがんばらなくちゃって必死だと思うんですよ。だから、今は大丈夫でも、気づいたら自分でも抱えられないくらい淋しくなってたりするんですよ。
だから、頑張りすぎる前に、時々優しい言葉をかけてやってください」
「あぁ。気をつけるよ」
「……大切にしてやってください」
「あぁ。約束するよ」
拓巳のまっすぐな眼差しが、俺に突き刺さった。
「よかった……」
拓巳は、言いたい事を言って安心したのか、ホッとした表情を浮かべてジントニックを流し込んだ。
「おかわり」
「畏まりました」
空いたグラスが、静かにさげられた。
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