◇◇ 第35章 The birthday in NY ◇◇

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「子どもの時からずっとそうで、羨ましいくらいに心がまっすぐだから、周りからすると疎ましいのか、はじめは意地悪にもあいやすくて。 夕方、璃子が帰って来ないって騒動になったときも、みんなで手分けして探したら、アイツ公園でしゃがみこんでて。 公園で待ち合わせしたまま何時間も待たされてるのに○○ちゃんは、用事があったから来れなかったんだって言って相手を庇(かば)うんですよ。 そのうえ、待ってなきゃって……。 仕方ないから、なんとか説得して無理やりおぶって連れて帰ってたら、背中でボソッと言うんですよ……」 「なんて?」 「『拓にぃ迎えに来てくれてありがとう』って。面と向かっては絶対に言わないくせに、背中越しだとかわいいこと言って。 頑固と言うか、素直と言うか……」 「っで、その意地悪は?」 「璃子のずっと待ってる姿とか、翌日も相手を責めない姿は、時間はかかるけど認知されて、相手の心を溶かして、ちゃんと仲良くなってました」 「そう」 「ええ」 「今も、そうだよ」 「えっ!?」 「先輩達からの攻撃を受ける事もあるけど、反面、同級生とは違って、人生の先輩だけあって、いち早く璃子の良さを見抜いて気づく奴もいるから、今は、もっと可愛がられてるかな」 「そうですか。よかった」 ホッとした表情でグラスを見つめる拓巳の瞳からは、璃子への愛しさが溢れていた。
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